コメント--バックナンバー 2010年10月

 皆様いかがお過ごしでしょうか。今年は本当に残暑の厳しい9月でしたが、やっと朝晩の涼しさが感じられる10月に入りました。 9月は京都南座で「義経千本桜」の通し狂言でございまして、市川海老蔵さんが大変活躍なさった月でした。私は「典侍の局」、「道行」と「四の切り」の「静御前」を努めさせていただきました。2年前にも歌舞伎座で上演させて頂きましたが、9月は「忠信」「知盛」「権太」と海老蔵さんが通しで三役お努めになら、肉体的にも精神的にも大変だったことと思います。2日に初日が開きまして『少しは涼しくなってくるかな…』と思っていましたが、夏の盛りの7月や8月より、9月の前半に暑さが残るという珍しい年でした。自分は風邪などの流行で健康管理が難しい冬よりは、夏の方が舞台の為には安心という気分はありますが、さすがに9月の10日あたりでは舞台の上が大変暑く感じられまして、『9月に入ったのに不思議な暑さだな…』と思っていました。18日以降からは、やっと雨や台風の影響で、夜は25度以下の涼さになりましたが、お昼は32度以上の日も数日ありました。また鴨川を見ていますと、いつもより水が少なく、川の生き物は大丈夫かなあと思いながら眺めていましたが、雨が降ると激しい流れになって、草も魚も流されてしまうほどの濁流になっていました。ホテルと劇場の行き来だけで、殆ど外に出られない日々が続き、少しは外気に触れたいと比叡山の梺まで車で上って行きましたら、空気が澄んでいて、京都の町が綺麗に見下ろせました。川や山など全ての意味で京都には自然を沢山感じられます。
 さて、今月は赤坂ACTシアターで「牡丹亭」を上演させていただきます。3日の夜には昆劇院の皆様が東京に到着します。2006年から蘇州昆劇院に通い中国のお芝居を勉強してきまして、2008年の3月に南座公演から始まり、その年の5月の北京公演。蘇州・上海での公演を度々重ねてきまして、この秋に初めて東京での御披露ということになります。先日から色々な記事で昆劇のお話しをしてまいりましたので、皆様もご存じのことと思いますが、昆劇はお芝居は当然のことながら、歌が重要な舞台創りになっていまして、今回の舞台でも自分は、6〜7分のアリアが4つ、3分ほどのアリアが2つ、また小さい歌もいくつかあります。これほどの場面で歌を歌うということは、大きなヨーロッパのオペラでも珍しいことだと聞いております。この22回公演を無事に歌いながら舞台が努められますように、そして昆劇の皆様が無事に過ごせるようにと今から願っています。赤坂ACTシアターは昆劇を上演するには少し大きい劇場なのですが、それを使ってスケールを感じさせる「牡丹亭」になれるように、演出や美術や照明などを色々と考えております。ACTシアターはテレビ局系列の劇場でございますので、音響なども工夫出来ると思っています。
昆劇院の皆様にとりまして一ヶ月の海外公演となりますので、楽しく一緒に過ごせる10月にしたいと思っています。以前も一ヶ月ほど京都を経験されておりますが、やはり東京で一ヶ月過ごすことには緑の少ない街ですので、また京都とは違う舞台と楽しさを見つけて行きたいと思います。
 10月が過ぎますと「八千代座」・「顔見世」となりますが、まずはこの10月「牡丹亭」をお楽しみ頂けましたら幸いに存じます。