コメント--バックナンバー 2010年5月

 皆様お元気でいらっしゃいますか。素晴らしい5月になりました。4月は雨の多い月でした。3月末から桜が早く咲き始めるという開花予想だったのですが、暖かい晴れの日があったと思うと、寒い日が続いたり、桜が一斉に咲くということがなかったような気がします。私は3月末から4月初めまで、さよなら公演の稽古や本番の為に、外を歩きながらゆっくりと桜を眺める時間も無く、移動の車中からの花見となりました。今年は温度差の激しい日が続いたので、咲き始めの桜、満開の桜、散り始めている桜など様々な様子が一時に観られました。関の扉に「桜咲く桜の山の桜花、咲く桜あり、散る桜あり思い思いの人心」という詩が出てきますが、『本当にそういうものなのだな…』と感じました。
 16ヶ月続いてまいりました「歌舞伎座さよなら公演」も、この4月28日をもって、お陰様で無事に千秋楽を迎えることが出来ました。この1年4ヶ月を振り返りますと「鷺娘」から始まりまして最後に「助六由緑江戸桜」等、自分が憧れておりました色々な大役を精一杯勤めることが出来ましたことは本当に幸せでした。特に今年の2月からは「籠釣瓶花街酔醒」の「八ッ橋」。「女暫」の「巴御前」。初めての老女役「道明寺」の「覚寿」。そして「助六由緑江戸桜」の「揚巻」を勤められましたことは女形冥利に尽きる喜びと感謝しております。そして、そして、29日の「修祓式」では、この歌舞伎座の「建築物に対する修祓式」と「歌舞伎座由縁の物故者に対する感謝祭」がありました。
30日の「歌舞伎座閉場式」では、立ち役さんの「都風流」、女形5人で勤めます「京鹿子娘道成寺」、大先輩方の口上、手締式などあり、それが済みますと、いよいよ現歌舞伎座も取り壊しとなります。
最後の日にはお客様が沢山劇場の前で記念撮影をしておられる風景を見ておりまして 、色々な思いが蘇ってきました。考えてみますと去年の1月から今日までが、あっという間だった気が致します。一昨年の秋に建て直しが決まりまして、未知な将来への不安が入り交じって、どうなることかと思っておりましたが、この1年4ヶ月の「さよなら公演」が続きますうちに、段々と計画を立てられるようになりまして、将来の歌舞伎座がお客様を更に心地よくお迎えでき、関係者にも働きやすい劇場になってくれるのではないかなあ・・・という期待も湧いてきたのでございます。私は暫く東京での舞台はございません。「南座舞踊公演」や「朗読会」やその他の地方公演が続きまして、秋には八千代座公演もございます。私としましてはこの「さよなら公演」を終えるまでは先の予定は決めずにいたわけでございますので、今年は、この1年4ヶ月の公演中にお受けできずに先送りにしていたお仕事を消化させて頂き、来年からはゆっくり予定を組んでいきたいと考えております。東京での舞台が少なくなるということで皆様にお目にかかることも少なくなりますが、これは現歌舞伎座がなくなってしまうから舞台に出ないというのではなく、歌舞伎座改修を機に自分の将来を考え、見つめ直そうという気持ちなのでございます。これまで全力で「さよなら公演」を勤めさせていただきました身体をほぐし、気持ちに余裕が出来ましたら、今後の予定を考えられると思っております。このコメントが載りまして一週間も経てば、案外早く気持ちも落ち着いているかもしれません。暫く皆様にはお待ち頂くことをお願いしたいという思いでございます。また、「さよなら公演」中、何度も劇場に足をお運び下さいましたお客様方に本当に感謝申し上げる次第でございます。本当に有り難うございました。
 さてこの「素晴らしい5月」。気候も良くなると思います。五月晴れを期待して、将来の日本の古典芸能のことなどを考えたり、名所旧跡などを訪ねたり、改めて日本の良さを心に甦らせたいと思います。
 それでは皆様、また来月のコメントでお目にかかりましょう。
これまで現歌舞伎座を支えてくださいましたお客様。
本当に有り難う御座いました。