コメント--バックナンバー 2009年1月
 皆様あけましておめでとうございます。1年が経つのは本当に早いものでございます。今年も素晴らしい年でありますようにお祈り申し上げます。
 私は昨年の9月から舞台が続いておりまして、9月は「日本振袖始」と「近江源氏先陣館」。10月は「魚屋宗五郎」と「本朝廿四孝」。11月4日に下関で「雪」・「葵の上」・「鐘ヶ岬」の地唄3題を上演いたしまして、6日から16日まで八千代座ではもう踊ることはないと思っておりました「鏡獅子」を上演させていただきました。その後「天守物語」の朗読会で地方を4箇所回りましてから、南座顔見世興行へと入りました。去年の秋には歌舞伎座改修の発表もございまして、年末年始と多くの舞台が続く忙しい毎日となります。南座で上演致しました「ぢいさんばあさん」と「信濃路紅葉鬼揃」は、再演になりますので覚え事も無くスムーズに初日を開けることが出来ました。また夜の部の最後には源氏物語千年記念ということで、「源氏物語」の新作「夕顔の巻」を上演しました。これは初めてでございましたが舞踊の「葵の上」として六條御息所を踊らせていただいておりますので、役作りも滑らかに入っていけたような気がいたしました。実を申しますと顔見世の初日が開けまして暫く致しますと、花粉が飛んでいたのでしょうか、喉に炎症が起きまして咳も少しありましたが、幸い熱はなく食欲が落ちることもなく過ごすことが出来ました。初日から1週間ほど大変冷え込む日が続きましたので、『今年は寒い顔見世興行になるのかな』と思いきや、それ以降は意外と暖かい日を過ごすことが出来ました。昔は11月の後半には紅葉の時期でございましたが、この度の顔見世が開く頃には紅葉の最中に京都を味わうことが出来ました。昔の話しになりますが、私は21歳の時に初めて南座顔見世興行に出演させていただいたのですが、その頃は大変寒く北山時雨と言いまして北から粉雪が飛んでくる日が続きました。またレストランなどに入りますと窓側では大変身体が冷えていた覚えもございますが、最近では本当に気候が変わりました。話題としまして以前は「紅葉狩」という作品を10月、11月に上演することはありましても、12月に上演するということは江戸時代の役者からすれば大変野暮な話しであったと思います。紅葉狩りを12月に上演するということに不思議な気がしておりましたが、近年では12月初め頃が丁度紅葉の時期となっております。
南座顔見世もお陰様で連日大入り満員でございまして、ありがたい限りでございます。また南座という劇場で上演しますには、9演目の道具が入りきれず所作台を奈落から上げて敷き、また奈落の仕舞たりすることに大変時間が掛かりまして、初日は22時半を過ぎてしまい、ご来場のお客様へは大変ご迷惑をおかけしました。実は昔は24時を過ぎることも有ったそうでございます。実際私が初めて京都の顔見世に伺わせていただきましたときも、終演が23時40分を過ぎてしまいまして「京人形」は預かりということで、上演はされませんでした。当時は23時半を過ぎてしまいますと最後の出し物が出ないことも希にございました。
その昔、初代雁治郎さんが顔見世に出演しておりましたときのお話を聞いたことがありますが、ある日0時を過ぎ、雁治郎さんの出し物を上演することが難しいということになり、お客様に預かりのお知らせがされましたら『雁治郎さんの顔を見られずには帰れない』とお客様がお立ちにならなかったことがあったと聞きました。急遽幕を開けまして浄瑠璃を奏で見得を切り10分ほどで幕を閉めましたら、お客様も満足してお立ちになったというそんな優雅な時代もございます。今ではそのような事は許されないと思いますが、そんな話しを思い出すこの12月顔見世興行でございました。舞妓さんも顔見世を見に参りまして、顔見せに出演している贔屓の俳優さんのお名前を簪に書き入れてお座敷に上がるという、京都独特のしきたりもございます。5年ぶりの南座顔見世興行でございましたのでとても懐かしく感じました。今後も顔見せはもちろん、舞踊会や他の公演でも南座へ伺わせていただくと思いますが、やはり京都といいますのは千年の都と言われる情緒のある町でございます。
今年の1月は「鷺娘」と「鰯賣戀曳網」。2月に「京鹿子娘二人道成寺」「三人吉三巴白波」を上演させて頂きます。歌舞伎座改修に向かって1年目のお正月を迎えます。どのような年になりますか私はただ『充実した日々と、お客様に御満足いただける出し物を』と考える毎日でございます。
これからまだまだ寒さがやってくることでございましょう。皆様お身体に気をつけてお過ごし下さいませ。それでは初春の舞台で皆様にお目にかかれることを楽しみにしております。
本年もどうぞ宜しくお願いいたします。