コメント--バックナンバー 2008年12月
 皆様お元気でいらっしゃいますか。
いよいよ冬がやって来たという感じが出てまいりました。私は10月公演を終え11月4日に下関公演を済ませまして11月6日〜16日の八千代座公演も無事に努めることが出来ました。下関の舞踊会を八千代座公演の直前に行われまして、特に下関の舞踊会は地唄3題ということで、「雪」・「葵の上」・「鐘ヶ岬」を上演させていただいたのですが、これまで各地に大きな出し物ばかり持って行きましたので、実は『お客様に満足していただけ無いのではないか』と心配していた次第でございます。しかし東京でお稽古をしておりましたときに「雪」・「葵の上」・「鐘ヶ岬」というものは、地唄として曲が充実していると実感致しました。「雪」は黒バック。「葵の上」は黒バックに基調に燭台。「鐘ヶ岬」は桜の明るい背景で踊れるように少し変えて設えました。演奏家の富山清琴さんと清仁さんによります三弦・唄・箏で3曲努めていただきました。私が思いますには長唄や義太夫その他多くの演奏家による広がった世界よりも、こぢんまりした日本独特の雰囲気を味わっていただけたのではないかと思う次第です。チケットもほとんど完売になりまして『今度はいつ下関に来られるのかな』と考えられる今回の公演でございました。また公演が終わりまして実行員の方からフグをご馳走になりました。秋も深まってきましたこの時期のフグといいますのは特に美味しくらしく、とても楽しい下関でした。食事を終えましてそのまま山鹿へ入りました。八千代座では「口上」・「鏡獅子」を上演致しました。お陰様で発表しました直後にチケットも完売致しまして、毎日舞台にだけ集中することが出来ました。「鏡獅子」は5年前に南座で上演させていただきましたきり全く踊っておりませんでした。前回のコメントでも述べさせていただきましたが9月、10月と毛振りの稽古をしてまいりましたので、何とか無事に努めることが出来ましたし、また八千代座という特別な空間で自分の柄にない「鏡獅子」でございましたが、大入りのうちに無事に千秋楽を迎えることが出来ました。5年以上もやらせていただくことがないと思っておりましただけに、初日と千秋楽はある種の感慨がございました。実は今後も踊らせていただく機会があまりないと思っております。しかし後シテの獅子はあまり激しく舞わず、獅子の精霊と言うようなイメージで装束を決めさせていただきました。実はお能には「船辨慶」をコガキがつきまして演出を重くするような場合は後の朝盛の霊は白装束で努めることがあります。私も年齢を考えまして後を白で努めたわけでございます。過去に6代目菊五郎さんも鏡獅子を白で努められたことがあったそうで私が初めてではないのですが、そのような心持ちでやりますと『あまり暴れることはせずにまた努められるのではないかな』と思えるのでした。
 今年は雨の日もありましたが、あまり寒い日もなく過ごしやすい山鹿でございました。15年ほど前に伺ったときは大変冷え込んだ日がありまして11月10日頃を過ぎますと、冷たい所作舞台の上で踊っておりますと足の裏から冷気が伝わってくる事もありましたが、この度はそのようなことはなく、特に初日は蒸し暑いくらいでお客席は換気をしなければならないくらいでした。
 16日に千秋楽を迎えますと18日から「天守物語」言の葉コンサートになります。朗読会も2年程前から行ってまいりまして、当時はどうなりますかと不安もございましたが、地道な演劇活動と言いましょうか、各地の皆様に足をお運び頂きまして、自分なりのライフワークとなるような気が致しております。朗読会が終わりますと「南座顔見世興行」の為に京都へと入りますが、新作の「源氏物語」以外は再演となりますので、なるべく落ち着いて京都の師走に向かって行ければと思っております。
 1年が過ぎるのは本当に早いものでございます。12月の顔見世が終わりますともう年明けを迎えます。また来月お正月のコメントでお目に掛かりたいと思います。温暖化とはいえ冷え込む日もございます。皆様どうぞお身体を大事になさって下さいませ。